ホワイトラン衛兵:俺が指差す方向へずっとこの道を真っ直ぐ歩いて行け。
突き当たりに小さな家がある。煙突から煙が出てるのが目印になるだろう。
早朝以外はいつも、外のベンチに座って占いのことばかりを考えているはずだ。
どうやら私の探している、おばあさんのことみたい。
衛兵の言う通りに南方面へずっと歩いて行くと案の定、遠くに見える小さな家の煙突から
煙がモクモクと立ち昇っていた。
丁度Sumomoたちの横を、家へ向かってテクテクと歩いていく老女の後ろ姿が見えた。
『数日前に夢の中で現れた、あのおばあさんと背丈格好がほぼ一緒・・・!』
Sumomo:待って待って~!
Sumomoは片手を振りながら、老女の元に急いで駆け寄った。
彼女とは初対面のはずであり、夢でしか顔を覚えていない。
Sumomoは単純に、人違いならとりあえず謝ればいいと思っていた。
・・・ところが、その老女はこちらが来るのをずっと前から知っていたかのように振舞った。
オラヴァ:あら、かわいい猫ちゃん。やっとバァバの所へ遊びに来てくれたんだね。
・・・そろそろ、来るんじゃないかと思っていたところだよ。
表情が険しいのは、怒っているからではない・・・元からこうらしい。
オラヴァは手招きした後、ゆっくり歩いてベンチに腰を下ろした。
オラヴァ:ここのベンチに座ってバァバの話を聞くんだ。
出会った記念にあんたの未来を占ってあげるよ。こんなことは滅多にない大チャンスさ。
・・・さぁさ、早くお座り。
Sumomo:あの・・・いきなり声をかけてしまって、ごめんなさい・・・。
私の話を先に聞いていただけませんか?不思議に思うかもしれませんが・・・
―――――――――――――――――――――――・・・
エンブレムがあしらってある建物のこと、謎のおばあさんのこと・・・一部始終を語った。
昨夜見た夢を除いては・・・。
オラヴァ:驚かせてしまったのはこっちのほうさ。夢に現れた婆さんってのは私だよ。
知っての通り、私は占いが大好きでねぇ。・・・中でも人の未来を予言することが得意なんだ。・・・ふふふ。
あんたの言ってる目のエンブレムを象徴としてる建物は、恐らく・・・魔法大学のことだろうね。
Sumomo:魔法大学・・・??
オラヴァ:・・・知らないのかい?
あんたには魔術師の素質があるだろうから、ウィンターホールド大学で魔法の基礎を一から学ぶといい。
ほとんど独学なんだろう?・・・魔法使いに憧れているんなら、一度は行ってみなきゃ。
それにあんたにとって、ウィンターホールド大学の入学は
吉と出ている。
Sumomo:・・・・・。
本当は・・・・魔法を極めたい。色々な魔法を極めて、人々を救いたい・・・
私の立場からこんなこと言うのは、矛盾してるかもしれないけれど。
でも・・・でも・・・・・・
・・・――――私が魔法大学に行くことを決めたら、シセロはどんな気持ちになるんだろう?"裏切り者だ!"って・・・・言われそうだなぁ・・・。オラヴァ:強制はしないよ。自分の人生は一度きりなんだから。
自然に任せて川の流れに身を委ねるのもいいんだよ?
・・・けれども、時には逆らうことも必要だってこと・・・覚えておくんだ。よく考えて行動し
自分の進みたい道を選べばいい。
今進んでる道は一つだけじゃない・・・別に歩む道もあるのだ、ということをオラヴァは優しく教えてくれた。
できれば闇の一党での活動を休止して、ウィンターホールド大学に今すぐにでも入学したい・・・。・・・オラヴァは急にスッと目を閉じた。
オラヴァ:・・・ところで私が一番、気にかけていることなんだが、繰り返し同じ夢を見るって言っていたね。
Sumomo:・・・はい。ほぼ毎日・・・。
オラヴァ:強く思えば思うほど・・・夢魔は私達を夢の世界に引きずり込んでいくのさ。
大学の夢を何度も見てしまうのは
"優れた魔法使いになりたい"と強く願っているからなんだ。
――――――そうだ。
私はずっと、魔法使いの道を諦めていなかった。このまま延々と闇の一党で人殺しをして生きていたくない。
魔法使いの見習いのまま終わらせたくない・・・と。
・・・そんな気持ちが心のどこかにあるから、繰り返し同じ夢を見ちゃうんだね。
オラヴァ:逆に憎悪をぶつけられたり、深い愛慕を寄せられたり・・・
そんな強い感情が人の姿を形作ってしまうんだよ。
夢の中に突如割り込んできたシセロは?
私に対する
憎しみ?怒り?悲しみ・・・?・・・・・・。
オラヴァ:・・・まだ気付いてないようだが、あんたには
過去と未来を夢で映す能力がある。
気分を悪くしたらすまないが、
昨晩の夢・・・あれは過去夢と言って・・・
『うっ・・・。そのことは全く話してないのに・・・・・・ひょっとして、私の考えてること全部見透かされてる!?
だとしたら、オラヴァさんって・・・すごく怖い人だなぁ~・・・』
オラヴァ:目を塞ぎたくなる光景だとしても、背いてはいけない。
あんたに送るSOSのメッセージかもしれないんだ。
・・・夢は大切な人を救う鍵でもある。そのことを決して、忘れないでおくれ。
オラヴァは軽く腕組すると私から視線を外し、今度はシセロの方へと目を向けた。
オラヴァ:・・・あんたと一緒に居る相棒さんのことだけど、見れば見るほど似てるねぇ。
・・・15年ほど前になるが、シロディール地方のある田舎で見かけた男のことさ。
丁度あんたのお連れさんの道化服を、色鮮やかにした装いでね。
顔は一切、見ることができなかった。
不気味な仮面を付けていたせいでね。
・・・見た目の印象はそれぐらいだったか。
Sumomo:・・・その方とは、お知り合いだったんですか?
オラヴァ:いやいや、全く赤の他人だよ!あんな
過去最悪な人間は数少ないだろうね。
関わり合いたいとは全然思わなかった。私は遠慮するよ・・・!
Sumomo:え?
何があったのかSumomoには分からなかったが、怒気を帯びたオラヴァの顔はさらにシワくちゃになった。
・・・―――――やがてあたりは薄く赤く染まった時間に、シセロは空の雲行きを気にしだした。
そして独り遊びを終えた後、Sumomoの元へと駆け寄った。
シセロ:そろそろ帰ろうよぉ~・・・
Sumomo。
Sumomo:え?ええッ!?
『な、なんで?私のこと・・・初めて名前で呼んだ。それはどうでもいっか。
とにかく・・・どうせうちらが闇の一党だってことは、オラヴァさんには全てお見通し。
隠してたってあなたの考えてること、ぜ~んぶ覗かれてるんだから』
Sumomo:うん。そろそろ帰らないと・・真っ暗になっちゃうよね。
オラヴァさん、ありがとうございます。優しく接してくれて・・・。今日会えたこと、忘れませんから。
オラヴァ:さようなら。また何かあったらおいで。・・・そうだ、手土産を持ってお行き。
オラヴァは手作りのニンジンの入ったケーキを、Sumomo達に持たせてくれた。
Sumomo:涼しくなってきたから早く家に入ってくださいね。・・・それじゃあ、私達今度こそ帰りますね。
・・・。
あまりにも酷過ぎて、本人には全てを語れなかったけれども・・・いつか、知る時が訪れる。
ドーンスターの聖地・・・タムリエルの皇帝の死・・・
・・・・・・とても大量の血の海が見える・・・。
私は全てを予知してしまった。
あんたの道は幸運とは程遠い、厳しく、不毛な道かもしれない。残酷だが、これも運命なんだよ。
決して未来は明るくないが、行き着く先は平穏な日常。
全てを語れば命を奪われてしまうことに繋がってしまう・・・。
悪く思わないでおくれ・・・。これもあんたの為だと思ったんだよ。
この選択は間違っていないと決して言い切れないが。
・・・だが、進む道の鍵だけでも教えたかったのさ。大丈夫。まだ未来への歯車は、回り続けている。
太陽が沈み、辺りを暗闇が覆いつくす。
薪木の月・・・夏が終わり、季節は秋へと移り変わる。
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