アレクシア・ヴィキ:アスゲール・・・スノー・ショッド・・・
ヴィットリア・ヴィキ:ええ。私、これでよかったと思ってるわ。ちっとも後悔してないもの。
敵同士であっても
私達の恋愛には全く関係ないとおもうし、それに・・・
少しでも帝国とストームクロークの平和に繋がるのなら、それは素晴らしいことよ。
アレクシア・ヴィキ:・・・そう簡単にうまくいくとは思えないね。私は認めない。
アスゲールとの結婚を諦めるなら今しかないんだよ?
ヴィットリア・ヴィキ:まだ言ってるの・・・!?・・・私達、愛し合ってるのよ。迷う理由はどこにもないわ。
アレクシア・ヴィキ:・・・・・・。
『母である私でさえ、ヴィットリアの結婚を止めることすら出来ないなんて・・・悔しい!
あの忌々しいストームクロークめ・・・私の可愛いヴィットリアと一夜を共に過ごしているなんて
想像しただけでも怒りで震えてしまうよ!』
――――――――――――――――――・・・
チチチ・・・
小鳥の騒がしい鳴き声で目覚めたSumomo。
まだ眠たい目を擦りながらゆっくりベッドから起き上がって窓に向かい、カーテンを勢いよく開けた。
澄んだ空気を吸いながら背筋をピーンと伸ばして体を軽く動かしたけれど、いまいち調子が出ず
重だるさが残っていた。それもそのはず、昨夜は遅くまで弓矢の練習に没頭していたからだ。
『見守っていてください神様。私に味方してくれる神様・・・』
Sumomoはチェックアウトを済ませるために階段を下りると、フロアから聞こえてくる
客同士の会話の内容に驚いた。
「いやー・・・まいったよ。式開始早々、新郎新婦の親族同士でちょっとした揉め事があってよぉ。
危なく中止になるところだったんだ。首長の説得で今はなんとか大人しくなったが・・・皆ぶつぶつ文句言いながら、式に
参加しているよ」
客の誰もが結婚式の話題で持ちきりの様子で、目がギラギラしていた。
『敵同士の結婚だもの・・・騒がないほうが逆におかしいよね』
チェックアウトを済ませた後、昨日と同じ道を歩いて会場へと足を運んだ。
Sumomoが聖堂前入り口の小さな門をくぐった時、特に衛兵に止められることは無かったので
妙な違和感を感じた。
『ヴィットリアを守るための兵士が何人か配備されていて、厳重な警備の中の式だとおもっていたのに・・・
どうして一人だけなんだろう?』
辺りを見渡すと、皇帝の警護にあたるペニトゥス・オクラトゥス使徒がいたので話を聞くことにした。
皇帝のいとこヴィットリアの寛大な配慮で、一般市民も国外の人も皆が楽しめるように
堅苦しい検問は一切しないで、出入り自由にしている・・・とのことだった。
こんなに自由があっていいものかと、逆に戸惑いながらも会場に入り、Sumomoはなるべく
一般人を装うため、ターゲットとなるヴィットリアに近付いて謁見をすることにした。
Sumomo:お初にお目にかかります。エルスウェアーから来ました。
この度はアスゲール様とヴィットリア様のご結婚を心からお祝い申し上げ・・・
アスゲール:おいおい・・・そんなにかしこまらなくてもいい。
ここは帝国とストームクロークが対等の立場で団結した場所だ。
身分など気にしないで、平和と幸せを一緒に分かち合おうではないか。他国でもだ。
お前が普段振舞っている自然な姿でいいんだぞ。
Sumomo:あ・・・・・・はあ・・・・。
ヴィットリア・ヴィキ:アスゲールの言う通りよ。スカイリムの問題は私にもあなたにも関係はないの。
そんなことは忘れて、今日は沢山食べて、飲んで、笑う日にしましょう。
どうぞ心おきなく楽しんでいってね。
こうして新郎新婦との言葉を交わした時間は長くなった。
話を交わしているうちに緊張が解れ、二人との距離も短くなった気がする。
そして、平和を誰よりも純粋な気持ちで切望するヴィットリアの姿にSumomoは心を打たれた。
アスゲール:最高な気分だよ。ヴィットリアは素晴らしい女性だ。
男なら誰もが羨ましく感じるだろう。自分がインペリアルと結婚したことに父が不満なのは知っているが
そんなのは問題じゃない。
ヴィットリア・ヴィキ:・・・これまで色々と揉め事はあったけれど、先ほど式が無事に済んだの。
・・・とても素晴らしかったわ。この記念すべき日を大切に深く胸に刻みたいの。
ああ・・・感動してまた・・・。今とても胸がいっぱい・・・みんなよくしてくれて・・・最高に幸せよ。
ヴィットリアの目から一筋の涙が零れた。
Sumomo:・・・・・。
私が思っていたよりも、遥かにヴィットリアは清らかな心の持ち主みたいね。
・・・
皇帝のいとこというだけで、この人を殺さないといけないなんて・・・・。
もっと他にも皇帝を誘き出す手段はあったはず。
こんな笑顔を見せられたら、やる気が失せちゃうな・・・なんだか胸が痛い。
ためらう気持ちを抱きつつ、アストリッドの命令を絶対に実行させなければならなかった。
アストリッドが言っていたように、ヴィットリアの挨拶が始まれば、会場内の参加者の視線が
一気に集中することになる。その時が最大の狙い目なのだと・・・。
余計に誰が殺したのかこれでバレてしまう訳だが、この目立った行動をする理由には何か思惑があるらしい。
バルコニーに向けて矢を放てやすく、尚且つ招待客から死角になるようなベストな場所はあそこかもしれない・・・。
聖堂入り口付近の木の扉から中へ入って、狭い石の螺旋階段を上った先の眺めは
バルコニーまでの距離も丁度いい感じだ。
『ここなら上手くやれそう・・・』
Sumomoは静かに弓矢を手にとり、ヴィットリアがバルコニーに上がって挨拶するその瞬間まで
固唾を呑んで見守った。
バルコニーと睨めっこしてから早くも30分が経とうとしていた時、会場内に動きがあった。
ペニトゥス・オクラトゥス使徒に導かれて、アスゲールとヴィットリアの二人が向かった場所は、バルコニー。
そして挨拶の準備が着々と行われ、いよいよ本番のときがやってきた。一気に緊張感が高まる。
ヴィットリア・ヴィキ:こんにちは。善良なソリチュードの皆様。
すでにご存知の方もおられると思いますが、私は皇帝のいとこに当たるので夫より先に代表して
ご挨拶をいたします。どうかご理解の程宜しくお願いいたします。
『あれ?視点が揺らめいてる・・・これじゃあ失敗しちゃう!』
Sumomoはヴィットリア目掛けて放てるよう矢先に集中したが、何かが邪魔をして
矢を握った手が言うことを利かないでいた。
ヴィットリア・ヴィキ:最近は戦争とかドラゴンとか、至る所で恐ろしいことが起きているようですが
今日はどうか不安を忘れて楽しく過ごしてください。
私達夫婦にとってこの特別な日を一緒に分かち合ってくださり、とても感謝しています。
全ては皆さんのおかげです。夢が叶い本当に素晴らしい結婚式になりました。皆さんどうかお幸せに。
私達も幸せになります。何もかも本当にありがとう。
『どうして矢を持つ手を離せないでいるの?命中させればこの任務はすぐ完了するというのに。
でも怖い・・・怖くて、手が震えてる。私はいったい何に怯えてるんだろう?』
数十秒もの間、弓矢を構えてただその場を動けずにいたSumomoに、突然弓を持つ両手が
ほんわりと何かに包まれる温かさを感じた。
驚いてすかさず目を向けると、背後にはヴィーザラの姿があった。
!Sumomo:は・・・離して!・・・ヴィー・・・
ヴィーザラ:シッ!!集中しろ!余計なことは考えるな。・・・殺すことだけを考えろッ!!
Sumomo:私はいつだって真剣にやってる!でも・・・・・今回だけは無理みたい。
あの人を殺すなんて・・・こんなの、こんなことって・・・・・
・・・――――私の目に映る彼女は、幸せ満面の笑みを浮かべる清らかな心の持ち主だった。
私がためらってしまう理由はきっとそこにあるんだ・・・。
Sumomo:できない・・・やっぱり駄目・・・!・・・・駄目なの!
罪のない人間を囮に使って殺すのはいけないこと。だって・・・あの人は何も悪くないもの。
平和を願っている、ただそれだけなのに・・・どうして・・・!
ヴィーザラ:・・・変な奴だな。今頃になって怖気付くのか?
・・・残酷だが、これは皇帝を誘き寄せる最初のシナリオにすぎない。
だが、このチャンスを一度逃してしまえば、全ての計画が水の泡になってしまうんだぞ!よく考えてみろ。
アストリッドのみならず、皆の名誉を傷つけることになるんだ。
ヴィーザラ:・・・そんな不安な顔をするな。安心しろ。俺が全力で守ると約束するよ。
何せ俺はお前に返してもまだ返しきれない借りが沢山出来たからな。
妙な気持ちが胸の底からこみ上げてくる。
今言った言葉に、どこか引っ掛かりがあって気にせずにはいられない。
借りって・・・・・・?ねぇ、ヴィーザラ・・・それって、どういうことなのか教えてよヴィーザラ:今だ!放て!!ヴィーザラのサポートのお陰か、右手でおさえていた矢を迷いもなく離すことができた。
放った一本の矢は勢いよく真っ直ぐ飛んでいき、ブスリと鈍い音をたてて見事にヴィットリアの胸を貫いた。
きゃああああああーーーーー!!!ヴィーザラ:白いドレスは血で真っ赤に染まっているぞ。放った矢が命中したみたいだな。
・・・さぁ、今のうちに聖域に戻るんだ!
――――――――――――・・・
アスゲール:ヴィットリア!・・・ヴィットリアーーーー!
あああ!我が愛しの妻が何者かに殺された・・・!何てことだ!!
「花嫁が殺された!」
「殺したのはきっと帝国に違いない!ストームクロークに責任を押し付けられるようにな!」
「なんだと!?犯人が誰だか特定していないのに何故わかるんだよ!」
「殺るのはストームクロークしかいないわ!何も言わなくてもわかるもの。
あの下品で野蛮な奴等ならね・・・!!」
アスゲール:愛する妻が目の前で殺されたんだ!正気でいられるものか・・・!!
殺人犯を探せ!見つけ出したら、その場で処刑してやる!!
――――――――――――・・・
Sumomo:・・・・・・
ヴィーザラ:何をボーっとしてるんだ?アストリッドの言葉を無駄にするな!さっさと行け!早く!!
Sumomo:・・・!・・・う、うんッ!
大混乱の嵐の中、Sumomoは人混みを掻き分けて会場をあとにした。
―――――――――――――――――――・・・
ヴィットリア・・・あなたを殺そうとしたのは私なの。"許して"とすがっても聞き入れてくれないよね?
聖人のようなあなたなら、事情をすべて話せばきっと許してくれてたかな?
「この中庭ではストームクロークも帝国もないわ。平和と秩序に満ちたあたたかい人達でいっぱい。
2つの魂の結びつきを祝いに来た人たちだけなの。この楽しい時間を一緒に過ごしましょう」
――――― Sumomoは心の中でずっと祈り続けた。
清らかなる魂よ、どうか安らかに眠りたまえ・・・と ――――――。
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