力でねじ伏せて、いやらしくも私に手を出してきたのよ。
そのとき私は、心の中で憎しみを込めて何度も叫んだ。
いつまでこんなことが続くの?
痛いし、苦しい・・・・・・そうだ!
殺そう。
・・・そしたら・・・・・何もされない。自由になれるんだ、と。
・・・―――――梟をも寝静まる、ある真夜中に彼の寝室へこっそり忍び込んだ。
そして私は・・・予め用意していたナイフで、彼の腹部を何度も突き刺して・・・殺したわ。
・・・その時に淡々しい心地よさを感じたの。
それから・・・何度も何度も、人を殺して快感を得た。そうやってますます、虜になっていったわ。
・・・私が27歳を過ぎた時に闇の一党にスカウトされて、それからはずっとここよ。
夫のアーンビョルンに出会って、時機リーダーに昇格して・・・こんなところね。
―――――――――――――――――――・・・
ガー・・・・・・ガー・・・・・アストリッド:・・・。
夜母の声を聞いたSumomo・・・
聞こえし者は、闇の一党の
最高幹部。
私より上に立って指揮を取ることなんて・・・認めたくない・・・!今更、昔の規律に戻すつもりは全く無いわ。
きっとシセロが唆して、嘘を言わせているに決まっている。
なんとかシセロから遠避けさせないと・・・
・・・――――――――――――――――――――――・・・
アストリッド:・・・家族間の争いはなるべく避けたいの。
あの娘・・・ああ見えて心が折れやすい性格なのかもしれない。・・・お願い。恐がらせるようなことはやめて。
・・・脅かされる存在だというのに何故、優しくしてしまうのか?
アーンビョルン:そんなに悪い奴でもなさそうだしな。
・・・だが、俺はまだ完全に仲間と認めたわけじゃない。
それに"お前の少ない肉ではデザートにもならない"と言っただけだ。これが脅しと言えるか?
アストリッド:あなたは遊びのつもりでしょうけど・・・
でも、私達の感覚とは違うのよ。免疫がまだ、あの娘には足りてないわ。
あなたは、余計なことをしないでほしいの。わかる?・・・私の立場も考えて。
今リーダーを下ろされてしまったら、この聖域の未来はどうなってしまうんだろう?と
不安感が私を支配していく。
アーンビョルン:お前には頭が上がらない。好きにするといい。・・・だが、油断はするな。
あの愚か者と腐った死体、出来損ないの魔術師・・・用心しろ。
手の平を返して、知らない間にお前の地位を奪うかもしれないぞ。
・・・――――私の一番恐れていることを、アーンビョルンは
平然と語った。
アストリッド:これから先の・・・闇の一党の存続を脅かすことに繋がってしまう。
・・・シセロが消えるまでは、黙って私の言うことを聞いて・・・!
遠くから、ガブリエラとヴィーザラの視線が私達に降り注いだ。
この話が皆に聞こえてもいい。
アーンビョルンはとても頑固だから、自分の意思を貫き通す人。
・・・いいわ。逆に黙っててくれたほうが気が楽よ・・・
これ以上、厄介事に首を突っ込まれても迷惑だわ。
・・・――――――――――――――――――・・・
私が全て、片付けなくてはならないの。できれば皆を巻き込みたくない。
私がやらなければ・・・
私が闇の一党の未来を担っている。
―――――――――――――――――・・・
『アマウンド・モティエールとやらの依頼・・・いったいどんな内容なのかしら?
何だか嫌な予感がするわ・・・。早く帰ってきて・・・・・・Sumomo!』
・・・――――――――――――――――――――――――・・・
私だけ焦っているの? 怯えているの・・・?
―――――――――――――――――・・・
アーンビョルン:一番印象的だったのは、特に
首筋のところだ。すごく良かった。
うちの女房はいい女だったよ。・・・おっとっと!勿論、今もだ。愛しているのは今も昔も変わらない。
ヴィーザラ:ハハハ・・・幸せそうで羨ましいな。・・・嫉妬するよ。
・・・――――正直アーンビョルンの自慢話は、これだけでは済まなかった。
俺の最大の苦痛とも言うべき内容・・・それは・・・アストリッドと出会った時の話、初夜を迎えた夜の話・・・
これを週に3回、2時間以上も聞かされることだった。
『もう、精神的に耐えられそうにない・・・・・・』
・・・―――――――――――――――――――――――・・・
惚気話に耐えかねて、俺はしばしば持ち場を離れることもあった。
ある日のこと、単なる偶然なのか幸運なのか、聖域内の一角で沐浴をしている彼女の姿を目撃してしまう。
チャプン・・・
真っ先に目に入り込んだのは、アストリッドの軟らかくて豊満な乳房と大きく突き出たつややかな臀部・・・
自分の視界からなかなか離れず、その場から動けなかった。
何故なら彼女は闇の一党のリーダーであり、アーンビョルンの妻であり・・・
俺にとってアストリッドは、他の女性よりも一段と魅力的に見えた。
アーンビョルンは彼女に対して、どれくらいの愛情を持っているかは分からない。
だが俺が彼女の夫だったなら・・・計り知れないだろう―――――・・・。
・・・―――――――――――――――・・・
「ヴィーザラ、あなたのお陰よ」
「・・・さすがね。シャドウスケールの最後の生き残りだけあるわ」
「あなたがいなかったら、今の闇の一党は存在していなかったと思う」
「頼りにしているわ」
・・・―――――――――――――――・・・
アストリッドの声が、頭の中で響き渡る・・・。
どんな状況でも平常心を保てたはずのヴィーザラだったが、アストリッドを想うだけで
胸が高鳴り鼓動が早くなっていった。
・・・幾度も罪悪感に絡まれ、自分に嫌気が差し自己嫌悪に陥るときもある。
何度考えても打破する術は何も出てこなかった。
――――――――――――――・・・
『俺はどうやら、Sumomoとの約束を果すことはできそうにない・・・』
大広間に通じる通路を、アストリッドは力の無い足取りでふらふらと歩いていた。
そんな姿を見たヴィーザラは、居ても立ってもいられず声をかけてしまった。
ヴィーザラ:アストリッド・・・君の今の顔は・・・・苦悶に満ちているよ。
俺は出来る限り、君の望みを受け入れたいんだ。
ヴィーザラはいつものように優しく声を掛け、アストリッドを元気付けようとした。
彼女に一瞬笑顔が見られたが、またすぐに顔が曇った。
そんなアストリッドの徒ならぬ様子に、ヴィーザラは事態の重さを感じ取った。
ヴィーザラ:・・・俺に全てを話してくれないか?
君のしたいように、君の望みを遂行するよ。それとも俺では・・・・駄目なのか?
アストリッド:・・・いいえ・・・・・・あなただけよ。・・・私にとって今、あなたが頼りなの。
・・・ずっと一人で悩んだ挙句、仲間に助けを請うなんて・・・。
弱気なところを見せてしまって、リーダーとしてあってはならないと思ってるわ。
でも考えても何も出てこなかった・・・!
アストリッド:私にはもう誰も頼る人がいない。
いつも優しく声を掛けてくれるあなたに、すがるしかないと思ったのよ。どうか私を・・・助けて・・・・。
アストリッドは潤んだ目でヴィーザラを見つめた。
彼女のこんな表情を見るのは出会って以来、初めてだった。
ヴィーザラ:俺でよければ・・・力になるさ!
それでアストリッドが安心できるのなら、それだけで本望だよ。
アストリッド:ありがとう・・・心強いわ。ああ・・・あなたが居てよかった。最初からあなたに声を掛けるべきだった。
ヴィーザラ・・・・・・ずっと私から離れないで。
意味深に話すと、アストリッドはヴィーザラの胸に手を当てそっと身を寄せた。
ヴィーザラ:ア・・・アストリッド・・・・・!やめてくれないか?この場所では・・・誰かに見つかってしまう・・・
アストリッド:アーンビョルンが怖いのね?大丈夫。
・・・少しだけ、このままでいさせてちょうだい。
ヴィーザラ:気が動転して・・・。・・・何故なんだ?アストリッド・・・
アーンビョルンのことは・・・愛してないのか?
アストリッド:・・・夫のことは勿論愛しているわよ。
でも気になっていたの・・・前から気付いていたわ。・・・私を見つめるあなたの熱い視線が。
今までの行動を見てそう思ったのよ。
私の寂しさを癒してくれるのはきっと夫ではなく、あなただと思ったから・・・
夫から得られなかった何かを、あなたは持ってるって・・・。・・・これは私の勝手な妄想かもしれない。
ヴィーザラは驚いた。
アストリッドの方から心情を告白するとは・・・予想外だったからだ。
アストリッド:ヴィーザラ・・・・・・私を癒して欲しいの。一度でいいから・・・慰めて・・・・その言葉を聞き入れたヴィーザラは、戸惑いもせず終始微笑み、何度もうなずいて
アストリッドの
首筋に優しくキスをした。
「君の苦しみを解き放ち、共に助け合い、一生涯護り抜くと誓うよ。自分に自信を持て、アストリッド・・・」・・・―――――――こうして一段と寒さを増したスカイリムの、長い夜が更けていった。
...続きをたたむ ≪≪