Sumomo:・・・!
アストリッド:報酬はお金とそれから・・・闇の一党の伝説的人物を召喚する特別な呪文よ。
これはとある闇の錬金術師が、特別な方法を用いたところ偶然発見したらしいの。
私は魔法のことは分からないし必要ないから・・・あなたが持っていてちょうだい。
闇の一党に関わりのある伝説的人物とは誰のことなのか?
Sumomoにとって、とても興味深いものだったが、この巻物をいつ使えばいいのか悩むところだ。
手渡された魔法の巻物をドレスのポケットにそっとしまいこみ、顔を上げた瞬間
アストリッドからの鋭い視線がSumomoとぶつかり合った。
アストリッド:あなたのそのドレス・・・とても素敵じゃないの。
生地や刺繍糸が高級なものばかりなようだけど、いつの間にそんな上質な物を手に入れたの?
今まで着ていたローブは擦り切れて汚れが目立っていた。新しく新調したものが
この高級感漂うドレスということから、アストリッドから見ればとても違和感を感じているようだった。
Sumomo:あ・・・あの、これは・・・
アストリッド:ふふ・・・言い辛いでしょうね。・・・送り主はだいたい察しがつくもの。
スカイリムでそのような珍しく古いドレスを扱うお店はソリチュードのレディアント装具店しかないはずよ。
それにあの街は帝国との貿易が盛んで・・・インペリアルが多いでしょう?
人差し指を頬に当ててニヤケながら、さらに言った。
アストリッド:いずれにしても、あのボロボロのローブよりはこっちの方がしっくりくるかもしれない・・・
まるで灰かぶりの娘が魔法にかけられて綺麗なドレスに身を包んだかのような。
・・・どこかのおとぎ話みたいでとてもロマンチック。
Sumomo:・・・・。
アストリッド:でもね・・・一言私に言ってほしかった。あなたにもっと似合う服を用意してあげられたのに。
・・・なぜなの?どうしてここの長である私に相談してくれなかったのよ!?
肘掛けを軽くドン!と叩くアストリッドの姿を見て、Sumomoは思わず身を縮めた。
一呼吸置き、乱した心を落ち着かせたアストリッドはまたSumomoの顔を鋭い目つきで見上げた。
アストリッド:・・・わかっていたわ。
・・・よりによって・・・シセロとはね・・・?ふ・・・ふふッ。その目は・・・・・・やはり図星のようね。
あなた達のこと、前から怪しいと思ってたのよ。
Sumomo:シセロのこととなると、血相を変えるあなたはまだ、敵視しているんですね。
・・・どうして意地悪なことばかり言うんですか?
Sumomoは今まで我慢してきた分を一気に吐き出すかのように、初めてアストリッドに反抗した。
ガラリと態度が変わったSumomoの姿を見て、アストリッドは驚きの様子を全く見せなかった。
『あなたは可愛い家族の一員だからよ。そう・・・可愛い妹みたいなあなたをアイツに奪われたくないもの。
・・・全てはこの闇の一党を脅かすシセロから遠ざけるため。そうすれば自然と古い習わしも
忘れてくれるはずよ・・・』
アストリッド:・・・くどいようだけど、私の言うことをよく聞きなさい。
今のうちにシセロから手を引いたほうが身のためよ。
Sumomo:私は・・・私はそうするつもりは・・・・・・今のところありません・・・!
アストリッド:そう、そこまでシセロを庇いたいの?・・・その様子だと
・・・まだ魔法が解けていないようね。現実の世界に引き戻しましょうか?・・・灰かぶりのシンデレラ。
Sumomo:・・・・。・・・そう言うあなたこそ・・・・・・・ヴィーザラと裏でコソコソ何をやっているんですかッ?
アストリッド:・・・・・・!――――――――――――――――――・・・
そう・・・あれは・・・・・
私がアストリッドとヴィーザラの間に何かがあると確信したのは
2日前のこの出来事がきっかけだったの。・・・―――――――――――――――――――――――・・・
私が聖域に戻ったときは、アストリッドとヴィーザラの姿がなかったし、どうしてこの2人がいないのかを
聖域の仲間から聞きだそうとしても答えは出てこなかった。
・・・――――――――――――――ある人物を除いては・・・。
Sumomo:ふぅ・・・。どこを探してもいないんだけど・・・ねえ、四六時中聖域内にいる
あなたなら知ってるでしょう?
シセロ:四六時中ねぇ・・・。当たっているといえば当たっている。
する事といえば、夜母の世話くらいだろうけど・・・たまにお散歩・・・たまに夜の徘徊。
黙っていればそのうち戻ってくるんじゃないか~?・・・2人揃ってねぇ・・・ヒャヒャヒャ。
意味深な発言にSumomoはドキリとした。
シセロ:私が怪しいと思った場所まで案内するよ。
たぶん・・・いや、確実にあの箇所に仕掛けがあるに違いない。きっとそこには・・・
―――――――――――――――・・・
シセロが案内してくれたのは、アストリッドとアーンビョルンの寝室だった。
そして、シセロは入って右手にある大きなタンスを指さした。
シセロ:ほらあそこ・・・よく調べるのだ。
タンスが浮いてるのがわかるだろう?ね・・・?きっとあそこの後ろが隠し扉になっているんだ!
恐る恐る近付いてタンスを調べると、シセロの言った通り隠し扉が隠れているみたいだ。
タンスにはわずかに隙間があり、この隙間の向こうの広い空間までは薄暗く少し湿気高かった。
そして空気の流れは、淀みなく波打つように穏やかではないことが感じとれる。
・・・きっと誰かがこの向こうにいるに違いない。・・・なんか嫌な予感がしてきた。これ以上深入りはしたくない・・・。
シセロ:・・・怖じ気付いたのかい?こうしてよく耳を澄ましてごらんよ。
この冷たくシットリとした木を伝って聞こえてくるだろう・・・?
・・・耳元に囁く優しい響きや、激しく感情を振り撒いたうねり声ッ!
そして・・・熱い息遣いッッ!!!・・・ほら、これは間違いなくッ・・・・・・!
耳をピッタリとくっつけて、シセロと同じ体制になった。
僅かな隙間からヒューンと風が吹いて、Sumomoの耳を優しく撫でる。
風と混ざり、微かに聞こえてくるのは聞き覚えのあるあの人の・・・・・・。
シセロ:この向こうに居るのは・・・・もしかするとひょっとして・・・・・・・
アストリッドと
ヴィーザラなのか・・・?
アヒャヒャヒャ・・・!だとしたらぁ・・・・
まさに狂恋ッ・・・・・・姦通だぁぁ~ッッ!!あああああ!!激しすぎるよぉぉ~!
Sumomo:まさか!あ、ありえな・・・・・・嘘でしょう!?・・・シセロく~ん・・・
・・・・・・うそ・・・・・・だよね・・・?
叫びたい声をなんとか抑えて、Sumomoはシセロに問いかけた。
シセロ:聞こえし者はシセロを疑うのかぃ?・・・酷い!!シセロは生まれてから一度も嘘を吐いたことはない。
夜母とシシスに誓って・・・断言できる!ほら、集中してよく聞いてごらんよォ!
・・・―――――――――――――――――――――・・・
この向こうには秘密の隠し扉があって・・・
その扉を開くとその奥で・・・・
体を寄せ合い手足を絡ませて、互いに見つめ合う2人がいる・・・?
あの勇ましい姿で真面目な闇の一党のリーダーが・・・
快楽に顔を歪ませ・・・・・・
悦びに震えた声を叫ぶ
まさか・・・まさか・・・・・・・
・・・まさか・・・・・・・!
・・・・・・
アーンビョルンは?
どうするつもりなの・・・?
・・・――――――――――――――――――――・・・
Sumomo:・・・・・・。
シセロ:・・・・・・つまらない。なぜならシセロは、2人の関係に全く関心がないからね。
聞こえし者の考えてることが、さっぱりわからないよ。どうしてそこまで真剣になれるのだ?
・・・関われば面倒なことになりかねないのにねぇ?ん?・・・まさか・・・もしや・・・・・・!
ハッとした顔をしたシセロは、何かを思いついたようにして、再びタンスに耳をつけて
隠し扉の向こうの様子を探った。
シセロ:クク・・・興味がそそられたものとは、きっと・・・アレかな?
・・・久しぶりすぎて気付くのに時間が掛かりすぎてしまった・・・。
Sumomo:・・・なッ・・・何を言いたいの・・・・・・?
シセロ:ククク・・・聞こえし者はとぼけるのが下手だね。・・・耳と鼻が真っ赤だよ。
興味があるのはあの2人の関係じゃなく、SEXのことだろう?
Sumomo:・・・・・・・!!
素早く耳を両手で覆い隠したけれど、なぜか変な汗をかいてしまう。
シセロに悟られることの恥ずかしさが、余計にSumomoの顔を熱くさせた。
シセロ:・・・・・・・・・シセロはすっかりご無沙汰だ。
チラリ。Sumomo:やらしい目でこっちを見るんじゃないのッ!!
シセロ:シーーーーーーッ!!・・・私に負けないくらい声が大きいねぇ。おや?
・・・まさか・・・興奮してるの?今の言葉で感じちゃったのかぃ??
Sumomo:な、何ぶつぶつ卑猥な言葉を連発してるの!?・・・気持ちわるぅ~・・・!
シセロ:・・・・・・。
・・・――――――――――――――・・・
―――――――――――――――・・・
―――――――――――――――――――――・・・
アストリッド:・・・・あ、あなた・・・今・・・私に向かって何を言ったのよ!?
私が愛しているのは・・・アーンビョルンだけ!変なことを言わないでちょうだい!
ヴィーザラは私の大切な家族の一員なの!ただそれだけよ。やましいことは何もないわ。
・・・・・・・・・気分が悪いわ。さっさとここから出て行ってッ!!
『・・・・・・・・・・・・・・・』
どうして意地の悪いことを、ぶつけてしまうのかしら?・・・・嫌いになりたくないのに。
・・・あなたが・・・・・・・あなたが悪いのよ。
いえ・・・根本的にこの闇の一党をかき回して、混乱に導いたのは・・・
・・・・シセロよ・・・!
ああ、なんて憎らしいの・・・・・・?
・・・ああ・・・ああぁ・・・・・・
ガクンッ。だんだん私が、嫌な女になっていく・・・・・
―――――――――――――――――――――――・・・
「純然たる無垢な心をもった人間はこの世にはいない。皆、不完全につくられているものだよ。
ありのままの考えを曝け出す者。世間から善人と見られたいが為に、自分の失点を包み隠しながら
生きる者・・・。振る舞いは人それぞれだけれど・・・私が思うに、後者が一番この世で
多いんじゃないかとおもう。細く長く人生を生き抜こうという知恵を、生まれたその瞬間から
与えられた人間の元々持つ性質なのだ。
・・・私?聞くまでもないじゃないか。・・・私は間違いなく前者のほうだろう?」
あるときシセロに言われた言葉。私は後者のほうだね・・・きっと。
だからってわけじゃないけれど、このままずるずるとどっち付かずな行動を取ってる時間はあまりないと思う。
アストリッド側なのかシセロ側なのか・・・それとも・・・・・・。
Sumomoは精神的にも肉体的にも、疲労が限界に達するのは時間の問題だった。
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