・・・―――――――そうかもしれない。
これまでに何度も皮肉な言葉を私にぶつけてきたこと。それがシセロの嫉妬だったということ・・・
素直になりたいけれど、なれない自分がいる。
私の本当の気持ちはいったい何だろう?・・・自分の気持ちが分からない。
どうしたらいいのか?
どんな形で示せばいいのか?
シセロの突発的な行動に、少し
恐れを感じている部分があるのかもしれない。
シセロ:仕方が無いね・・・今日は諦めて部屋に戻るとしよう。
次に会う時は、誤魔化さないでハッキリしてもらうよ。ああ、でも・・・
あまりしつこく迫ってしまうと、今度は私がシシスに裁かれてしまうね・・・気をつけないと・・・。
シセロはそう言いつつも諦めきれずに、Sumomoの周りをウロウロ・・・。
不意に覗き込もうとして顔を近付けたが、これに敏感に反応したSumomoは思わず大声を上げてしまった。
・・・うわっ!!Sumomoはとっさに、シセロの口を両手で覆い突っぱねた。
Sumomo:や、めて・・・!いきなり何するつもり!?離れてよ!!
シセロ:クク・・・なぜ私の口を覆うんだい?・・・ちょっと近寄ってみただけなのに。
・・・だがこれで分かった気がするよ。
聞こえし者が、どんな反応をするのか確かめてみたかった。
ん~・・・それにしても・・・見れば見るほど、毛むくじゃらで目がまん丸で・・・猫そのものだねぇ。
『だから・・・何?褒めてるつもり?』
出来れば私だって・・・・・・
私だってカジートじゃなくて、獣人以外の姿になりたい。そうすれば少しは
釣り合いがとれたかもしれないのに・・・
シセロ:さて・・・明日はリフテンか。
詐欺師に、ごろつきに、人殺し・・・リフテンの環境は好きだけど、どうしても盗賊だけは好きになれないねえ。
誰かを殺す前にその持ち物を奪うんだって?
・・・なのに私がイカれてるって言うんだから。ンフフフフ・・・
Sumomo:・・・。
シセロ:少なくとも、シロディールのブラヴィルよりは10倍マシな街だ。
人の物を盗んでも絶対殺す連中じゃないことは分かっている。・・・だから
聞こえし者が命の危険にさらされる心配はないだろう。今回はここで見送ることにするよ。
それに母の面倒をみないといけないしね・・・。
『・・・・・・』
『あ~ぁ・・・もう少しだったのに。Sumomoったら、意気地なしね』
バベットはアストリッドのことをとても信頼していたが、逆に夜母の恩寵を受けた
Sumomoのことも、密かに応援したい気持ちがあった。
けれども、傍らにシセロの監視の目が行き届いてるとなると、そばに近寄りにくかった。
――――――――――――――――・・・
6日ぶりの夜母との対面に少し興奮気味のシセロだったが、なぜか心寂しい気持ちがだんだん溢れてくる。
また明日からせっせと瀝青を塗り、鼠を追い払い、蝋燭に火をつける作業に戻らないといけない。
久しぶりにシセロは夜母の身体に触れると、肌を刺すような冷たさが手の平に伝わった。
夜母は耳元でどんな風に、どんな声で囁かれたのだろう?
聞こえし者が羨ましく、そして妬ましい気持ちが込み上げてくる。
そのとき・・・静寂につつまれた夜母の部屋から、何者かの気配がうごめいていた。
シセロ:え? 今何て・・・?
辺りを見回したが、夜母の遺体だけしかなかった。
聞こえし者ではないのだから、当然シセロに話しかけてくるはずがない。
・・・だがシセロは、頭の中で囁きかける
誰かに耳を傾け、話しかけた。
シセロ:母じゃない・・・。お前は・・・・・・死んだはずのお前が、なぜ私に話しかけてくるのだ?
・・・――――――――――――――――――――・・・
・・・
決めたんだ・・・
クク・・・
・・・だって友達だろう?
シセロ:・・・・・。 そうだね・・・そうだ、言っていた。確かに言っていた!・・・気がする。
気がするだと・・・?
私の最後の言葉を忘れるなんて絶対ありえない。
・・・あの日の出来事は、お前の心奥に深く焼きついて離れていないはずだよ。
私に支配されたんだから・・・ヒヒヒヒ・・・。
おや?・・・お手々が震えてるねぇ。私のことをやっと思い出してくれたか。
シセロ:・・・・・・。
嬉しくない?私はとても嬉しい・・・やっと、まともにお前とお喋りできたんだから。
・・・しかし、不満だらけだよ。
肉体の無い私に感じることができない体験を、お前は自由に得られるんだから。
温もりや、感触、そして・・・快楽・・・・・
周りを見渡せば、獲物が沢山いる・・・。
シセロ:いったい、何が言いたいんだ?私に何をしろと・・・?
・・・・・。
・・・・・お前はあの夜・・・聞こえし者に触れたとき、こう思った。
――――――――――――――――――――・・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・はぁ・・・・・・違う・・・違うよォ!ここは温かい・・・こんなんじゃないんだ!」
――――――――――――――――――――――――――・・・・・
・・・と、ねぇ。
人それぞれ、拘りがあるんだろうが・・・・・・私はあの行動でこう解釈したよ。
・・・自分の側に・・・自分のものにしたいと思ったんだろう・・・??
だったらお前が望むままのことをすればいい・・・
・・・・・・いっそあのとき殺しちゃえばよかったんだよ。
シセロ:ころ・・・す・・・?駄目だ・・・・・!
・・・あぁ、剣を振るうのが出来ないことが理由?
それとも人一倍真面目なお前が、教義に反したくないからか?
ナイトマザーを溺愛してるから?ククク・・・他に何か理由があるの?
シセロ:・・・・・・・・
可哀想なシセロ・・・哀れなシセロ・・・お前は優しいよ・・・
実に・・・実に勿体無いねぇ・・・・・。
私が手助けしてあげよう・・・ナイフで一突きするんだ・・・!
そしたら、全て思い通りになるんだよ?
"・・・家族を・・・聞こえし者を・・・・・・"
ククククク・・・
・・・――――――――――私にはできない!・・・――――――――――――――――――――・・・
ブツブツ・・・
母よ・・・その声は貴女のものなのかい? ・・・いや、違う。
また頭の中の錯覚だぁ・・・・・
・・・・間抜けなシセロ・・・・・。
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