目の前の棺を見ると怪しげなスイッチがあり、ブリニョルフはそのスイッチを押した。
すると、大きな音を立てて床に隠し階段ができた。
ブリニョルフ:さぁ、この階段を下りるんだ。
こんな目立った仕掛けがあるのなら、すぐに衛兵に見つかってしまいそう・・・。
そんなことを頭の中で考えているうちに、あっという間にラグド・フラゴンに到着した。
ラグド・フラゴンとは、盗賊ギルドのアジトのことだ。
入り口の看板には、ビールに剣の絵があしらえてあって、どこかのお洒落な酒場を連想させる。
・・・だが、それとは反対にSumomoにとって最低な場所となった。
ここは丁度リフテンの街の地下に当たるようで、アジト周辺の流れている川は酷く濁っている。
地下と言うことは・・・下水道・・・そしてこの水は・・・・・・想像しないほうがいいだろう。
鼻を突くくらいの嫌な生臭さが辺りを漂っていた。
アジトに入ると、最初に出迎えてくれたのはデルビン・マロリーだった。
Sumomo:・・・初めまして。あなたがデルビン・マロリーさんですね?
闇の一党があなたの力を必要としています。どうか、ご協力をお願いします。
デルビン・マロリー:お前は闇の一党の者か・・・!アストリッドの使いとなれば断れないなあ。
あいつは・・・アストリッドは元気にしているか?たまには顔を見せるように伝えてくれよ。
近況報告がてら一杯やろうって。
アストリッドとは昔からの付き合いなのだろうか?どういう関係かは聞かないほうがいいかな・・・。
デルビン・マロリー:どうした・・・? 難しい顔をして。・・・まあ、いい。
この話はまたあとでゆっくり聞くとするか。・・・それで、俺に協力してほしい事とは?
Sumomo:このアミュレットなんですが、デルビンさんはご存知ありませんか?
例のアミュレットをデルビンに差し出すと、彼の表情が一変した。
デルビン・マロリー:・・・・!これは・・・どこで・・・これを?
い、いや・・・答えないでくれ・・・。いいか?・・・だれにも言いふらすな。耳の穴かっぽじってよく聞いておけよ?
そう言うと、デルビンはSumomoに近付いてそっと耳の近くでこのアミュレットの秘密を教えてくれた。
デルビン・マロリー:・・・これは、皇帝の元老院の一員のために特注で作られたアミュレットだ。
一財産程の価値がある。そう簡単に諦められるものではない。いいか?
闇の一党へその仕事を伝えるのは私の役目じゃない。だが、元老院の一員を殺してくれるなら信じるべき・・・・・
デルビンが近くで語ってくれてるけれど、ある言葉を最後にSumomoは聞き取れなくなってしまった。
たった一個の首飾りが、闇の一党の何十年分に相当する富が得られる。
・・・でも、これは今現在のリーダーであるアストリッドに全てを差し出さないといけない。
元々見つけ、託されたのは私なのに・・・そう思うと、悔しくなった。
欲に目が眩んでしまったけれど、余計なことを考えている暇は無い。話を進めなくては・・・
Sumomo:あ、あのッ・・・!お話の途中で悪いんですけど・・・これ、買い取ってくれますか?
デルビン・マロリー:え・・・このアミュレットをか?・・・ああ、もちろんだとも!
ちょっと待ってくれよ・・・・・ほら、これが信用状だ。これを使えるのはアストリッドだけだ。
都合をつけられるものならどんなサービスでも道具でも使ってくれて構わん。我々の合意としてな。
・・・かわいい女主人に宜しく伝えてくれ。
Sumomo:かわいい・・・?そ、そうですね。闇の一党に戻ったら、至急手渡します。
帰りかけたそのとき、デルビンはSumomoの手を掴んだ。
デルビン・マロリー:お前はアストリッドのことを信用しているか?・・・ははっ!目が泳いでいるな。
・・・さては新人だろう?遥々ファルクリースから来たのなら、ここでゆっくりしていってもいい。
それに俺はお前とじっくり話がしたい。向こうの部屋で・・・二人きりでな。
手を握るデルビンの親指が、Sumomoの手の甲をスリスリと擦る。
ヴェックス:ちょっと、デルビン!カジート相手になにやってんのさ!!
アジトの片隅で腕を組んだ女性が、こちらに視線を向けて怒鳴った。
Sumomo:あ、あの私はこれで・・・失礼します!
デルビンの手を振り払い、逃げるようにしてラグド・フラゴンから撤退。
息を切らして街の外に飛び出し、力が抜けたようにして木の幹に寄りかかった。
『・・・気持ち悪い!』 真っ先に頭に浮かんだセリフだった。
シセロに握られたときは、全くそんなことは思わなかったのに。
なぜだろう?とSumomoはそう思いながら、右手をじっと見つめた。
デルビンに握られた右手の感触よりも、昨日シセロに突然握られた感触のほうが
遥かに印象深く今でも残っている。
・・・しかし、それは気持ちの悪いものではなかった。
力強くて、温かくて・・・
思い出すと、なぜかくすぐったくてたまらない感覚。
嫌なことも吹っ飛びそうなくらい、Sumomoの胸の奥を熱くさせるのだった。
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