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【第26話】血肉と道化師


第四紀188年 黄昏の月23日

事が落ち着いて、ようやく自分たちが置かれている現状が明らかになってきた。
現在の我々は、聞こえし者を持たぬ闇の一党だ。
聞こえし者がいなければ、黒き聖餐は見過ごされてしまう。
夜母が近々、誰かに話しかけることは間違いない。
従って、アリサンヌ・ドゥプレに取って代わる聞こえし者が選ばれるだろう。

【第26話】血肉と道化師

第四紀189年 暁星の月24日

新しい年を迎え、最初に夜母がここシェイディンハル聖域に来てから2ヶ月経ったが
不浄なる母は我々の中の誰とも話そうとしない。
そこでラシャは古い闇の一党の伝統を復活させることを決めた。
それは夜母の遺体を守ることがただ1つの任務となる守護者・・・守りし者の任務である。


―――――――――――――――――・・・

ある日のこと、ラシャは私を呼び止めて重大なことを平然な態度で告げた。

【第26話】血肉と道化師

ラシャ:お前の耳にも既に届いているだろうが・・・。この度、闇の一党の古い役職が復活することとなった。
先ほどブラックハンドの会合でお前が守りし者と決定したよ。

シセロ:守りし者・・・夜母の世話だけが役目の?・・・・・・私が??
ガルナグやポンティアスがいるじゃないか。何故私が選ばれる・・・?

ラシャ:他の連中は戦闘に長けている・・・ということだ。それ以上は言えない。
・・・悪いが、守りし者に相応しいのは探してもお前しかいなかったんだよ。

ラシャの言葉が私の胸に冷たく突き刺さる。

任務を遂行し、これまで成し遂げてきた業績は評価してもらえないのだろうか?
・・・私に暗殺の素質が備わっていないとでも言いたいのか?
あの時ブラヴィルの夜母の墓地を守る、加勢メンバーに加えなかった理由はそのため?

【第26話】血肉と道化師S

ラシャ:・・・なんだ、その顔は。不服か?ブラックハンドの命令を拒むことは絶対許されない!

大きな声で喚かなくても分かっている。上の者の命令は従うことにしている。
ラシャは伝えし者であり、たとえ私が守りし者であってもラシャが断然地位が上なのだから。
当然守らなければ教義を破ることに繋がってしまうだろう。

ラシャは私に心の準備が出来るように、守りし者に就任するまでの残りの期間を
延長してくれると約束してくれた。

私はその日が来るまで、心残りのないよう剣を思い切り振るって・・・殺して、殺して、殺しまくるッ!!

・・・何もせずに後悔だけはしたくない。

嫌なら逃げてもいいと言われた。
少し思い留まったが、よく考えてみたら私には帰る家が無い。どうあがいてもこの道しか残ってないのだ。


・・・悲しさしか残らない。 苦しみしか味わえない。

――――――――――――――――――――・・・

ガルナグ:・・・守りし者?
・・・・・・嘗ては闇の一党に存在した役職だったとはなぁ・・・初耳だよ。

シセロ:私の持っている闇の一党の古い書物にも、守りし者に関する記述は一切記されていないんだよ。
聞こえし者が現れるまでの一時的な役職だと思いたいんだが・・・どうもラシャの様子がおかしい。

【第26話】血肉と道化師S

ガルナグ:ガハハハハハッ!じゃあ、ラシャが意地悪してるって言うのか?絶対ありえないぜ。
お前は逆に可愛がられてるほうだよ。大切な部下ほど最後の切り札は取っておくもんだろ?
死ぬ確率が高い依頼は俺の役目。生きて帰ってこれるのは強運だからだ。

『・・・それが暗殺者としてのプライドや誇りを傷付けるんだ。誰も私のことを分かってないじゃないか』

ガルナグ:安全な場所が見つかるまで守りし者は必要だと思うぜ。
管理なしじゃ、今ある夜母の姿を保てなくなるだろうよ。・・・ここは夜母の墓とは違って熱いからなぁ。

何百年も暗くて冷たい場所から離れての慣れない土地・・・さぞ辛い思いをしているだろう。

私が守りし者になることはそういう定めなのかもしれない・・・それは仕方の無いことかもしれない。

夜母の身体に触れられる・・・・・と言うことは、聞こえし者が不在な今
私に絶好のチャンスが訪れるかもしれない。 だけど・・・・・・

ガルナグ:何を考え込んでる?そんなに悩むことじゃないだろ。

シセロ:随分と鈍感だな・・・わからないのか?
ブラックハンドが下した命令は、私にとって人生で最悪な悲劇なのだということを。

【第26話】血肉と道化師 S

シセロ:・・・暗殺者の命とも言える剣を一生振るえなくなるかもしれないんだ。
私にとっては重要な問題なんだよ!

一党内で特に仲のいい2人だったが、この日だけは違っていた。
シセロはガルナグに冷たい視線を送って直ぐに逸らすと、ガルナグは初めてハッとした顔付きになった。

【第26話】血肉と道化師S

それもその筈、シセロがいつも怒ったときには必ず口を尖らせているからだった。

・・・――――――――――――――――・・・

「知っているだろうが守りし者は夜母の身体の侵食が進まないように保護することがメインだ。
それ以外の仕事は何も無い。・・・簡単だろう?それで給料は今より倍は出す」

「・・・お前にとっては好都合だと思うが?何より死体を好んでいそうだしな・・・」

【第26話】血肉と道化師S

「最後の任務を与えよう。お前じゃないとできない仕事なんだよ。引き受けてもらえるか?」

・・・――――――――――――――――――――――――――――・・・


私はあの時のことをよく覚えていたが、今では忘れるようにしている。
脳の奥にその記憶を無理やり押し込めて、自分がさも見覚えが無いかのように振舞った。
そうすればやがて嫌な記憶が次第に薄れていくのだ。

けれどもあの光景は非常に現実離れしすぎていて・・・

時々現状が同じ形をとらえると、突然脳裏に蘇る。


・・・――――――――――――――――――――――――――――・・・


ん゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!


【第26話】血肉と道化師

う゛ッう゛う゛ーーーーーーー・・・!

道化師:イッヒヒヒヒヒヒ・・・・!! 断末魔の叫びは美しい!・・・だが、今のは牛みたいな鳴き声だったなァ~。
アヒャヒャヒャ!ククク・・・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・これはこれでたまらないねッッ!!

【第26話】血肉と道化師

ラシャが最後にくれた任務とは、この狂気に満ちた道化師を殺すことだった。

彼の出身はスキングラードだそうだが、街はずれにある小さな砦の地下で、貴族階級の者を招きいれては
毎夜怪し気なパーティーを開いていた。
噂によれば、城から運よく処刑を免れた罪人が奴隷として連れてこられ一人ずつ異国の拷問具に掛けるという。
奴隷の中には淫猥で冷酷な拷問を受け、息絶える者も少なくはなかった。

このような猟奇的なパーティーは、一部の貴族の間で今でも熱狂的なファンが増えている。

道化師は拷問具で身動きの取れなくなった女を殺し、ハラワタを引きずり出して喜んでいる・・・。
それは彼にとって当たり前の行いなのだろう。鬼畜とは正にこのことを言うのだと思う。

シセロはそんな光景を目の当たりにしてしまい、珍しく顔色が青ざめた様子だった。

【第26話】血肉と道化師S

道化師:君の名はシセロといったね?もっとこっちに来て観察してごらんよ。
クククク・・・・・・この腸、まだ温かいんだ。ハハッ!!
一緒に縄跳びしないか?楽しいよぉ??ほらほら、早くしないと腐っちまうよぉ!!?

シセロ:驚いた・・・お前みたいな奴、闇の一党中探してもなかなか見つからないよ。
これは・・・悪趣味の域を超えている・・・。

道化師:ギャハハ!!私のことを世間では鬼畜というのだろう!?
何度言われたって平気だ!これが私の正常の範囲内なんだからさ。
これはね、芸術作品なんだ。触れていいのは私と私の嗜好を理解できる者達だけなのだ!
・・・だが、今回は特別にお前を仲間に入れてあげよう。
これが終わったら、スキングラードの砦の地下へ招き入れてやる。
奴隷を拷問具に掛けて、その光景を眺めながら高級酒を味わい、贅沢な料理を食べて
愉楽な時間に浸れるんだ!最高だろう!?・・・ね?

シセロ:悪いがお断りだ。・・・私には到底理解できない!

道化師:ほぅ・・・本当に惹かれるものが何もないと?おかしいなぁ・・・私とお前は似ていると思っていたのに。

『誰がこんな狂人に似ているだって?私は違う!決してありえない・・・』

道化師:・・・自分を認めることができないのか?
急がなくてもいいさ。私と一緒にいれば、徐々に理解しあえる仲になれるはずだよ。
お前の為に美しいマリオネットを沢山用意してあげるから・・・。

道化師は息絶え冷たくなった女の方へと近付き、シセロに見せ付けるようにして
ピチャピチャと音をたてながら身体中を愛撫した。

【第26話】血肉と道化師S

・・・――――それはシセロにとって、幼い頃の記憶を彷彿させるような光景と重なって見える。
この不思議な感覚はシセロの胸を震わせて、より一層熱くさせた。

シセロ:・・・・・・。

道化師:お前もあるだろう?覚えているはずだ。私と同じで、独占欲が強い人間なんだろうね。
ん?その目は・・・人の心がなぜ見通せるのか不思議でならないのか?
・・・私は普通の人間よりも抜きん出た力があるからだ・・・イヒヒヒ・・・
詳しく話せば長くなるが、率直に言うと私は洞察力の塊みたいなものだよ。

『・・・そうすると、彼には人の心や過去を読み取る能力があると?いずれにしても
危険な人物には変わりない。早々と始末したほうがよさそうだな・・・』

シセロ:・・・もう十分だ。この辺で終わりにしてくれないか?
その女も鎖に繋がれたままではかわいそうだろう?・・・早く土に埋めてやりたい。

道化師:何を言い出すかと思ったら・・・・・・ハハハハハ!!
笑わせるなよ!!かわいそうだぁ!!?・・・何も知らないくせに・・・大きな口を叩くな!
コイツは私との忠誠を誓ったばかりだというのに、すぐ裏切ったんだ!2度もな!!
それ相応の報いを受けるべきなのだ!!

道化師は発狂して女の首を鷲掴みにし、声を荒げて怒りをぶちまけた。

道化師:・・・この女はなぁ・・・私の妻なんだよ。私に殺されて・・・とても幸せだったと思う。
今頃どこを彷徨っているのやら・・・・・・・・・もうすぐお前の傍へ行くよ・・・。

【第26話】血肉と道化師

さっきまでとは一変した口調で、女の耳元に静かに呟くと、彼はそのまま強く抱き寄せ
ピクリとも動こうとしなかった。
そんな道化師に少しだけ隙ができたところで、シセロは黙っていなかった。
そっと背後へ近付き、そして・・・ドッ!!っと勢いよく昏倒させ、そのまま上半身に跨り強く押さえ込んだ。

シセロ:悪いが・・・お前の行く場所は決まっている。我等が常闇の父の元へお前の魂を捧げる・・・。

シセロは、鞘からナイフを取り出して道化師の胸の上に軽く突き立てた。

【第26話】血肉と道化師S

道化師:うぐッ!・・・ヒィ・・・ヒヒヒ・・・・・・・・!!やっぱり・・・やっぱりこうなると思ってた。予想していた展開だ。
だってそのナイフで一突きにする隙は沢山あっただろぅ?一気に刺せばよかったものを。なぜそうしなかった?

私は道化師の問いかけに答えなかった。今余計なことを考えてしまったら殺し損ねてしまいそうだ。
早くこの場から立ち去るためにも、ナイフを胸部に深くねじ込んで終わりにしてしまおう・・・。

道化師:・・・・・・好きにするがいい・・・。
押さえつけられて身動きひとつとれない哀れな男になにができるっていうんだ?
お前の顔を見つめることしかできないんだぞ?
・・・・それにしても、こう間近で目が合うと怖いなぁ・・・本物の闇の一党だぁ・・・クフフフ!
あれ?お前の股間がすごく熱くなっているよ・・・。心なしか私の心臓がバクバクしてきた。
何故だろう?・・・この私が怖れを感じているのか?ありえないぞ。それとも・・・
・・・!? か・・・勘違いしないでくれよ!?私はバイセクシュアルじゃないさッ・・・・・・!!

生死の瀬戸際にいるというのに、道化師からは恐怖感を微塵も感じない余裕な態度が
シセロにとって恐ろしかった。
殺したくてもナイフを握る手が震えているようで、なかなか言うことを聞いてくれない。

道化師:フフフ・・・私がお前の脅威ならばそのナイフで早く突き刺せ!
慣れた手付きで残酷に殺せ!!
・・・そして死んだ後の私の亡骸はお前の好きにするがいい。今までしてきたような
恥ずかしい行いをさ!!ほら・・・古血があそこにベッタリ付いてるじゃないか。

シセロ:それ以上言うな!お前の挑発になんか乗りたくない。・・・黙って逝け!!
・・・お前は不幸にも私の手によって死ぬ運命なんだ。お前の妻の代わりに怨みを込めてね。

道化師:・・・・・・ハハハハハハハ!!!妻は随分と好き勝手に過ごしてきたんだ。
私の知らないところでコソコソとね・・・・・・。逆に私のほうが憎しみで一杯なんだよ!!
思い出すと今でもハラワタが煮えくり返りそうだ・・・!

・・・私だけを見つめられず、私だけに尽くせなかった女に罰を与えて何がいけないというんだ?
神に代わって私が裁きを下しただけだというのに!

・・・これのどこが悪いんだよッ!!?


【第26話】血肉と道化師S


お前も同じじゃないかーーーーーーーッ!!!


誇りが何だ!? プライドとは何だ!?


私とお前は同じだ・・・

奇怪で狂気で猟奇なところがね。


記憶の片隅に隠れているお前の邪悪な部分を見つけたい・・・


クッククク・・・・・ハハハハ!アハハハハハ!!!


ザクッ!!

【第26話】血肉と道化師


・・・――――――アアアアアア!!!


【第26話】血肉と道化師S


『違う・・・違う・・・・・』


アハハハ・・・ハハ・・・・・ヒヒヒ・・・


シセロ:終わりだ・・・・・・もう全てが・・・・終わったんだ・・・暗殺者としての人生が・・・
・・・フッフフ・・・・・・クククク・・・・・・・・・。



第四紀189年 暁星の月30日

道化師は横たわって死んでいる。これで最後の任務は完了だ。
彼は笑って笑って笑いまくっていた。笑えなくなるまで、ずっと・・・。

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Sumomo R.

Author:Sumomo R.
いつもご訪問ありがとうございますo(*´∇`*)o♪
2016/10/21付けで完全にスカイリム専用ブログとなりました。
当ブログはR18/G※エロ・グロ含む記事がありますので、18歳未満の方は速やかにご退場ください。
オススメのMODの紹介やプチ小説(最初はゲーム日記だったのですが、妄想が止まらなくて小説染みた内容に変化しました・・・;)
下手な素人小説ですが、温かい目で見守ってください。
※MODは日々更新されておりますので、載せてる記事内容は古くなります。
※一部ネタバレ記事あり。
※拍手御礼画像は不定期で更新。
※当ブログはリンクフリーです。

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