【第6話】色褪せた闇の一党
ここが闇の一党・・・
中は薄暗く、少し湿気高い。
・・・場所が悪いのかここの洞窟には、ヤバめのキノコや植物が沢山生えている。
私を最初に出迎えてくれたのは、あの時の黒装束に身を包んでいた女王様・・・
ゲホッ!・・・いや、闇の一党のリーダー。
アストリッド:闇の一党へようこそ・・・久しぶりね。来てくれないのかと思っていたけど
安心したわ。私は闇の一党のリーダー、アストリッドよ。
頭巾の下は年を感じさせないくらいの美人さん。声もボディもなかなかセクシー。
実年齢は不明だが、だいたい40代後半くらいだろうか・・・。
アストリッドはナジルという家族の一人から殺しの依頼をもらってくるよう命令した。
私がどれ程の腕の持ち主か確かめたいようだ。
アストリッド:私の命令は絶対よ。そして、家族を尊重すること。・・・それが、ここの基本原則。
基本原則・・・・古くから闇の一党に存在しているのは知っている。
何かの本で読んだことがある。
・・・確か五つの教義というやつだ。
でもアストリッドが今言ったことと、本来の規律とは違うな・・・・・・なんでだろう?
そんな疑問を抱きつつ、ナジルの元へ・・・。
人殺しの依頼3件の仕事をもらった。本人曰く、楽な仕事・・・なのだそうだ。
・・・――――そして私は無心になって働く。今までの道徳的観念を完全に捨てて。
衛兵の目が離れた隙に目標人物を魔法で殺すのは難しい。
何日もかかったけど・・・全ての仕事を成し遂げた。
慣れというものは恐ろしい・・・。
Sumomoは久しぶりに闇の一党の聖域の扉を開ける・・・
ギイィ・・・
Sumomo:あ・・・あの・・・ただいま!・・・ナジルさんの依頼を勤めて参り・・・・・
あ・・・あれ?アストリッドの女王様?・・・誰も居ない・・・。
辺りを見渡すと奥の広間から誰かの声がする。
大広間には・・・アストリッド、気難しい闇の老魔術師フェスタス・クレックス
アストリッドの夫のウェアウルフのアーンビョルン、一番右端のアルゴニアンは
シャドウスケールとして生まれ育ったヴィーザラ。そして、手前のが私と来客者だ。
・・・何か軽い揉め事みたいなことになっている。
「だが夜母は誰にとっても母なんだ。我らが従うのは彼女の声・・・そして、意志のみ!
・・・だのに、反抗の危険を冒すのか?その先の・・・罰を受けようとも?」
夜母・・・?
夜母とは・・・・闇の一党にとっての聖母みたいな存在である。
闇の一党の神シシスの子を儲けたのち、生贄として殺し、その血肉と魂を
シシスに捧げたという。今は当然死んでいるので、ミイラ化しているのだろう。
この来客は闇の一党の歴史にとても詳しそうだ。
フェスタス・クレックス:ミスター・シセロ。私は貴方と夜母が来てくださったことを
嬉しく思っている。貴方の存在は喜ばしい伝統へ回帰することを意味する。
シセロ・・・・?
・・・あぁ・・・!
ロレイウス農場で私が助けた道化師さん!
・・・あの・・・・ちょっと、変わった人かぁ~!
シセロが運んでいたのは夜母の死体だったのねぇ~。納得。
『あ・・・・目が合っちゃった!私のこと覚えてるかな?』
ドキドキ・・・
・・・プィ!
・・・ああ、そうね。今はそれどころではない・・・と。
アストリッド:貴方も夜母ももちろん歓迎するわ。守りし者としての貴方の立場にも
それなりの敬意を払うつもりよ。・・・でも、勘違いしないでね。
この聖域の指導者は私よ。私の命令は絶対なの!・・・わかったわね?
・・・前にも似たような台詞を私にも言ってたことがあったっけ。
シセロ:ええ、そうですとも女神様、その通りです!・・・貴女がボスですよ。
あらら・・・どうやら私たちの女王様の強い発言に折れてしまったのね。
そう、ここ一党ではこの方に従うしかないんです。
・・・こうして軽い争いが治まり、やっと私の帰りに気が付いたアストリッド。
ここではまだ私の存在は薄いみたい。
アストリッド:・・・あら、帰ってきてたのね。丁度よかったわ。
あのブツブツうるさい馬鹿の話にウンザリしていたところよ。
女王様、バッサリと言い放つ。
いくらなんでも言いすぎでは?・・・と、思った。
まぁ・・・当てはまってるのかもしれないが・・・このことをもし
本人が聞いていたらと思うと・・・恐ろしいことになりかねない・・・。
一部の人からは歓迎されつつも、アストリッドからは歓迎されていないシセロ。
初めて訪れたファルクリースの闇の一党の聖域だというのに・・・
出会う人、皆からはあまりいい見られ方をされない可哀相な人だ。
アストリッドに引き止められ、急遽次の仕事を任された。
アストリッド:マルカルスの薬剤師の助手と話をしてきて。家族が調査をしていたら
その噂を街で聞いたらしいの。どうやらその娘は黒き聖餐を行ったみたいね。
黒き聖餐とは・・・この前、アベンタス・アレティノが夜母に祈りを捧げていたあの怪しい儀式のことだ。
・・・―――――霊たる夜母は、無数の黒き聖餐による依頼を選別し、リスナー
(聞こえし者)という闇の一党のリーダーに依頼の内容を伝えるという。
毎晩祈り続けているのに何故、願いが届かなかったのか?・・・と
あの時、少年は嘆いていたが・・・
ここでは聞こえし者の姿もないし夜母も最初から居なかった・・・。
Sumomo:あの・・・夜母がここに来たことで何か変わるんですか?
アストリッド:別に何も変わらないわよ。断言してもいい。夜母は私たちにとって
長い歴史の1ページにすぎないの。それもずぅっと閉じられたままのね。
この聖域では私達が独自に作ったルールに従っている。
・・・ここはタムリエルに残る最後の聖域よ。
Sumomo:え・・・!ここが最後の・・・闇の一党の聖域??
アストリッド:サルモールとの戦争でシロディールが制圧されて以来、長いこと聞こえし者は
存在していなかった。でもそれを知る者は少ない。・・・だから今でも儀式を行うのよ。
私達は後でその話を聞くの。我々を必要とする者がいれば、必ず探し出すわ。
こうやって古いやり方を捨てることで、私達は長い間生き延びてきた。
・・・夜母に頼らなくてもやってこれたの。シセロが何を期待しているのかは分からないけど
この聖域は私のものよ。
新しいやり方で闇の一党の未来を担うアストリッドは頼もしく見えた。
それと比例して頑固な一面もちらほら・・・。決して逆らえない。
Sumomo:シセロが元々いた闇の一党の規律が古いやり方だったせいもあるんですよね。
・・・そのせいできっと彼はまだ、夜母や規律に対する信仰が今でも根強く残っている・・・?
アストリッド:そうね。シセロは異常なくらい信仰心が強いと思うわ。
本来の闇の一党は五つの教義に縛られていたの。でも、もう何年も前に戒律へ従うことをやめたわ。
戒律と規律に従ったあげく、闇の一党はこんな状態になってしまった。
私達は最後の生き残りなの。私達に合った方法でやっていくしかない。
・・・この一党の基本原則は夜母ではなく、家族を尊重すること。そうすれば・・・全てがうまくいく。
強く説明するアストリッドの姿は自信に満ち溢れており、頼もしく見えた。
・・・でも、アストリッドが築き上げた今の一党とシセロの望んでいる本来の闇の一党・・・
この両極端な考えは、平穏にうまくやっていけるはずがない・・・とSumomoは思った。
・・・――――――ある日。
聖域の一角にひっそりと古びて読むことも出来なくなった額を見つけた。
・・・どうやら五つの教義が記されているみたいだった。
その額は私に何かを語りかけるように寂しく飾られていた・・・。