【第7話】本当の目的
シセロに挨拶をしなくちゃ!
・・・と思っていたが、タイミングよく向こうから声を掛けてくれた。
シセロ:待て、待ってくれ!お前を知ってるぞ!・・・そう・・・そうだ!
ロレイウス農園近くの道の途中だった。シセロは一度見た顔を絶対に忘れないんだ!
・・・やっと気付いてくれた!
さっきは目が合ったにも拘わらず無視してたよね・・・でも仕方ないか。
Sumomo:夜母を運んでいたのはあなたですよね?
ご無事でなによりです。随分と長旅だったのね・・・すごく・・・服が・・・・・。
・・・どうか疲れた身体を休めてください。
シセロ:なんと、お優しい・・・ありがとう~!・・・だが、私はすぐに母の面倒をみないといけない。
瀝青を塗って・・・それに祠も綺麗に・・・それから、それから・・・あぁ!蝋燭に火も灯さないと!!
シセロはね、やることが山ほどある。・・・休んでいる暇はない。・・・守りし者としての宿命なのだ。
守りし者・・・?闇の一党にはそんな役割もあったんだね。
・・・聞こえし者だけじゃないんだ。
シセロ:シセロは我らの母に誰も無礼を働かないように守っている。
・・・でも、勘違いしないで欲しい。私だけの母じゃない。私達の母だ。そうだろう?
お前が助けてくれたことを私は感謝している。もちろん母も喜んだはずだ!
私達の母・・・か・・・・・・。
シセロは古き慣わしを素直に蘇らせたいだけなんだ。
わかる・・・言いたいことはわかるよ。
けど、ここでは―――――・・・
突然シセロはくるっと私に背を向き、夜母が眠る棺に語りかけた。
ぶつぶつ・・・ぶつぶつ・・・
はい・・・女神様・・・・・・・そうですよ。・・・あなたがボスですよ・・・・今のところは・・・ね。
・・・最初はちょっとおかしいと思ってたけど、あらためるとかなり危ない感じの人だった。
いつからこんな精神的に病んじゃったのかなぁ・・・。
でも、これから大切な家族の一人になるんだ。失礼な態度はできない。
Sumomo:あの・・・これからも宜しくね。仲良くしましょう!
シセロ:愛しき母よ・・・貴女のシセロが危険から守るからね・・・いつも・・・ずぅっと・・・。
そうだ、綺麗なお花を取って差し上げよう。綺麗な真っ赤な花がいい・・・。
すっかり自分の世界に入り込んでしまっている。
こういう人に限って案外、暗い過去を背負ってるんだよねぇ・・・。
今は触らないほうがよさそうだ。・・・そっとしておこう。
・・・―――――――それよりも、だ。
シセロが来たことで、みんなの今の心境はどうだろう・・・?一番気になるところだね。
タムリエル唯一の聖域を守る闇の一党のリーダー、アストリッドの反応は・・・聞くまでもなかった。
ただの厄介者が来た・・・としか思ってなかった感じだった。
アストリッドの夫は・・・?
怒らすと殺されるかもしれないウェアウルフのアーンビョルンは・・・。
Sumomo:作業中すみません。・・・シセロや夜母についてどう思いますか?
アーンビョルン:あの愚か者とペットの死体のことをか?説明するまでもないだろ。
ヒイィ・・・!
・・・おちっこチビリそうになっちゃった。
間違ってもその槌で頭叩かないでください。死んでも恨みませんから・・・ね?
これ以上聞くのは無駄だし、危ないので次!
近くにいるのは鍛錬を終えたシャドウスケールのヴィーザラ兄さん。
シャドウスケールとは、卵から生まれると同時に暗殺の秘密訓練を施され、成人すると
闇の一党のメンバーとして受け入れられる、暗殺のエリート。
生まれてから成人まで殺しの勉強をしなきゃならないなんて、ある意味
可哀相な星の下に生まれちゃったのね・・・。恋愛も自由にさせてもらえなかったのかな?
カッコイイのにもったいないけど・・・ここ聖域では恋愛禁止じゃないでしょ?
え・・・好きな人いるの・・・?
Sumomo:ヴィーザラさん。私達獣種族は昔から敵対同士らしいのですが・・・・
仲良くしてくれます・・・よね?
ヴィーザラ:敵対?そんなことはちっとも意識したことがない。
常に殺しの訓練を受けてきたんでね。
・・・それより、こんなくだらないことを聞きにわざわざ俺に話しかけたのか?
Sumomo:いえいえ!率直に言いますが、シセロと夜母のことどう思います・・?
ヴィーザラ:正直よくわからない。だが、常闇の父シシスや夜母、それに
古くからの慣わしを蔑ろにしてるわけではないぞ。尊重はしている。
・・・だが、昔からあまり信仰心はない。暗殺をすることは、そうするように
訓練されてきたから・・・としか言えない。アストリッドが幸せならば・・・俺は満足だ。
ふーん・・・なんか最後のほう意味深な言い方だなぁ~・・・ハッ!
・・・ひょっとして・・・・・・・・違うか。
次は吸血鬼のバベットちゃん。彼女の口からキラリと鋭く尖った牙が見える。
見た目は子供だけど、実年齢は310歳。・・・色々と訳ありのようで、10歳のときに
吸血症になって年を取らなくなったらしい。
バベット:シセロと夜母のこと?ウーン・・・そうね・・・。
バベット:200年前だったら不浄なる母に命を捧げるところね。
でも、その時代はとっくに終わったと思うわ。今はアストリッドが母親代わりなの。
古い仕来りは時間と共に忘れ去られ、今ではリーダーのアストリッドの下で
生きていくことが当たり前となってるんだね。
・・・私もずっとここに居たらバベットちゃんと同じ考えになっていたと思う。
次は食堂にいつもいるナジルさんに聞いてみる。
ハンマーフェルのアリクル出身のレッドガード。
ナジル:物真似芸人、役者、曲芸師、手品師・・・その手の連中は嫌いだ。
フルート奏者は頭痛の種でしかない。とりわけ嫌いなのが道化師だ。
ナジル:基本的に老女の死体にもあまり興味がない。夜母に関しては例外だが・・・。
だが、私が仕えるのはアストリッドだけだ。
シセロってば、ナジルにまで嫌われてるなんて・・・。
見た目や職業で好き嫌いを判断するのは、食わず嫌いみたいなもの。
さて、お次は・・・
ダンマーのガブリエラお姉さん。
この人と一度話したことがある。内容は・・・不思議な感じで残酷だった。
ガブリエラ:夜母がいてこその、闇の一党なのよ。不浄なる母は
揺るがぬ支持と尊敬を集めるに値する人よ。でも、彼女の番人は少し熱狂的すぎてあまり好きじゃないわ。
・・・ねぇ、あなたの方こそどう思ってるの?別に答えたとこで、責めたり殺したりはしないわ。
Sumomo:あ・・・うんと・・・夜母のことは歴史の本でいくつか読んで知ってます。
実物は見たことないけど・・・。シセロは・・・警戒するほど悪い人じゃないみたい。
ただ、うちのリーダーとはそりが合わない感じでここに慣れてもらうのは少し難しいところ・・・・だね。
ガブリエラは真剣に私の言うことに耳を傾けてくれた、不思議な人でいいお姉さんだった。
・・・最後に、フェスタス・クレックス。
魔法の天才児だったらしい。一歳には魔法を覚えていたんだそうな・・・
得意なのは暗殺の破壊魔法だ。いずれはこの方から教わらないと。
でも・・・ちょっと話し掛けずらい・・・気難しいおじいちゃん。
フェスタス・クレックス:シセロや夜母の出現はこの聖域で絶えて久しい慶事だ。
アストリッドは有能なリーダーだが・・・
我等ははあまりに長い間、鳥合の衆でありすぎたのだ。
・・・仕事をあさり、教義を忘れはて、闇の一党はただの人殺しに成り下がった。
正直言って・・・恥ずかしい話だ。
・・・―――そうだね、フェスタスさん。
みんなの気持ち、そしてアストリッドへの忠誠心が固いこともこれでわかった。
・・・そのうち、シセロは孤立してしまう可能性がある。
悲劇的な結果を招かないために何をしたらいいんだろう・・?
タムリエル全土で唯一残っている聖域はここだけしかないみたいだし、夜母を
置ける場所もここにはあるが・・・当分・・・いや、ずっと機能しないままとなり
あの五つの教義の額と同じように忘れ去られてしまうだろうな・・・。
そもそもここに来た理由をもっと詳しく聞いていない。
本当の目的はいったい何なのかを本人から聞き出そう――・・・