【第14話】ヴォルンルードの依頼者
・・・――――夕方近く聖域の出入り口近くでアストリッドが私を呼び止めた。
アストリッド:ちょっといいかしら・・・?話があるの。
夜母の一件から約一日が経ち、アストリッドの気持ちがどうやらまとまったらしい。
あのアストリッドの悩みよう、相当な時間が必要と思っていたのに意外と早かった。
アストリッド:これが本当なら・・・夜母があなたに連絡者と話しをするよう命令を出したのなら
無視は出来ないわ。
それに・・・シセロはとんでもない騒ぎをこの聖域に持ち込んだ。この借りは必ず返してもらう。
相変わらずアストリッドのシセロに対する敵対心は強かった。
その態度に私は少しイラついたけれど、折角メンバーと仲良くなり始めたときに
わざわざ掻き乱すことは無意味だと思った。
『ヴィーザラはこの人のどういうところが好きになったのかな・・・』
考えると謎が深まっていくばかりだ。
・・・つい、アストリッドの顔をまじまじと見てしまう。
アストリッド:何?私に何か言いたいの??あるなら言いなさい。
Sumomo:あ・・・い、いえ・・・何もないです。
誰か見張ってないか辺りをキョロキョロ確認。中腰の姿がすごく怪しい・・・。
『駄目だ・・・絶対あのことは・・・これだけは言っちゃいけない』
アストリッド:・・・変な子ね。・・・まあ、いいわ。
ヴォルンルードへ行ってちょうだい。アマウンド・モティエールとやらと話をしてきて。
これが何に繋がっているのか、見ものだわ。
――――――――――――――――・・・
ヴォルンルードはここファルクリースの聖域から北へ向かった所・・・
ドーンスターとホワイトランの中間辺りにある。
見渡す限りここ一帯は雪が沢山積もっている地域だ。
『足が冷たい・・・私の靴はどこに行っちゃったんだろう?』
そういえば、シセロの部屋に初めて遊びに行ってそれから
自分の寝室で寝ていて・・・変な夢を見た後、ヴィーザラに起こされて・・・
気が付いたときは聖域の大広間で裸足のままでいた・・・
寝ている間に無くしちゃったんだ。
・・・まさか・・・夢遊病?
――――ぷふッ! そんな可笑しなこと、あるハズない・・・か。
ヴォルンルード内部はとても暗く冷たい。
光が差し込んだ場所はドラウグルの死体が転がっていて不気味だった。
奥へ進んだ薄暗い部屋には、例の依頼者が闇の一党が現れるのを待っていた。
貴族の服に身を包んだ男と付き添いの衛兵。
夜母が言っていたアマウンド・モティエールというのはこの人のことなのか?
アマウンド・モティエール:なんということだ・・・来たのか。本当に来てくれたのか!
この忌々しい黒き聖餐とやらも・・・成功したのだな。
チラッっと横目で見ると聖餐をした形跡があった。
血の付いた人骨・人間の心臓・人肉・書物【キス、愛しの母】・ベラドンナ・ダガー・・・
・・・・・・・・・この血生臭い光景を見るのも・・・どうやら慣れたようだ。
アマウンド・モティエール:君の時間を無駄にしない為にさっそくだが・・・複数の契約を交わしたい。
私が依頼する内容は、君の組織がこの数世紀で経験したものよりも遥かに重要な仕事だ。
・・・まずは人を数名殺して欲しい。対象と抹殺の手法は、多彩となるが・・・
君ほどの腕前の持ち主なら、楽しむことすら出来るかもしれないな。
『人殺しを・・・楽しむだなんて・・・一回も思ったことは無いよ。命令にただ私は・・・従っているだけ』
軽々しく口にしないでほしいとSumomoは思った。
アマウンド・モティエール:これらの殺人も、最重要目標に辿り着くための序章にすぎない。
・・・それを理解してもらいたい。私がこのおぞましい地下堂の奥で、暗殺者と密約を交わす真の理由は・・・
・・・皇帝の暗殺だ。
Sumomo:こ・・・皇帝!?タムリエルの・・・?タムリエルの皇帝を殺せと・・・?
アマウンド・モティエール:その通りだ。無論、これは小さな頼みとは程遠い話だ。
だが君は・・・闇の一党の代表として私の依頼を受け取る為にここへ来たのだろう?わかってもらいたい。
この日が来るまで・・・どれだけ備えたか。
Sumomo:・・・わかりました。引き受けましょう。
アマウンド・モティエール:感謝する。闇の一党の若者よ。・・・では、これらの品を渡そう。
君の・・・・・・ええと、上司に渡して欲しい。レクサス!例の品を。
アマウンドはパンパン!と手を叩いて付き添いの衛兵を呼んだ。
例の品とは・・・この手紙と奇妙なアミュレット・・・?
アマウンド・モティエール:やるべきことは全て、封をした手紙に記されている。
そのアミュレットも相当な値打ち物だ。それを使って全ての出費を賄ってもらいたい。
Sumomo:我々は・・・代償を必要とします。わかっていると思うのですが・・・その覚悟はありますか?
アマウンド・モティエール:・・・我が密なる友よ、勿論だ。
皇帝タイタス・ミード2世が倒れゆく時、山ほどの金貨を得られるだろう。
だが・・・それ以上のものも与えられる!闇の一党はこの数年、衰退の一途を辿っていると聞いた。
過去の権力も、財産も・・・そして尊厳さえも失っていると。・・・そうだな?
この人の言う通り・・・私の目に写る今の闇の一党は・・・元気が無いように見える。
・・・本当の悪人か確信は持てないはずなのに・・・ただ人の噂だけで動いている。
悪く言えばただの・・・・・人殺しと化しているだけだ。
アマウンド・モティエール:これを成し遂げたとならば・・・皇帝を殺せば
民衆は君たちを大いに恐れ敬うことだろう。
・・・―――――ひょっとしたら、かつての闇の一党に戻れるのかも?
ヴォルンルードからの帰り道・・・
気が付くと、Sumomoの足はホワイトランの街へ向かっていた。
『今日はさすがに宿へ泊まらないと・・・』
Sumomoにとって野宿生活は身近なものとなっているが、近頃のスカイリム野外は
危険になりつつある。
噂によるとどこかの女衛兵が寝込みを襲われ、1人残らず殺された事件があった。
しかも刃物で切り付ける跡ではなく、腹部や首を何度も突き刺した跡だったという。
未だその猟奇的な犯人は捕まってないそうだ。
出来ることなら捕まえたかったが、体力も無いし技術の問題もある。
もっとも魔法に関しては長けているが、まだ未熟なので諦めざるを得なかった。
・・・―――――君ほどの腕前の持ち主なら、楽しむことすら出来るかもしれないな。
・・・そうアマウンド・モティエールに言われた言葉だったが、未だ信じられない気持ちでいっぱいだった。