【第22話】盗賊さん、こんにちは。
あれからシセロと別れてベッドに腰を下ろしたSumomoは、フゥー・・・っと長く息を吐き思いふける。
シセロが顔を近付けて、私の何を知りたかったのか?
私の反応を見て得たものとはいったい何だったのか?
結局、彼が何をしたかったのか私には全く見当がつかず、考えれば考えるほど頭の中が混乱するだけだった。
アストリッドの命令で明日は、リフテンの盗賊ギルドへ長い旅に出掛けないといけない。
ホワイトランまでは徒歩になるけれど、そこから馬車を借りたとしても到着するのに夜中までかかるとおもう。
リフテンにはウィンドヘルムのアベンタス・アレティノの依頼で訪れたことが一度あるが
オナーホール孤児院での出来事以来全く街の印象は覚えていない。
Sumomoは馬車の荷台に揺られて、いつの間にか爆睡していたらしい。
御者:起きてくだせぇ、お嬢さん!リフテンに着いたよ。・・・あれ?財布が落ちてらぁ。
・・・・・・警戒心の欠片もねぇな・・・。
御者に叩き起こされ、Sumomoは馬車から降りる。
眠たい目を擦り、寝ぼけざまで門の取っ手に触れようとしたときリフテン衛兵に肩を掴まれ止められた。
リフテン衛兵:おい!お前・・・・見慣れない顔だな。ここを通りたければ、金を払え。
・・・でなければ・・・体で払ってもいいんだぞ?
上から目線でSumomoを見下ろし、クスクス笑い出すリフテン衛兵。
Sumomo:ハァ?・・・馬鹿じゃないの!?誰があんたなんかと・・・!!
顔を・・・いや、鼻と耳を真っ赤にして断固拒否した。
『これが街を危険から護る衛兵の態度?なんて失礼なんだろう・・・信じられない・・・!』
衛兵に対するイメージがまた一つSumomoの中で崩れ去っていった。
お金を渋りつつ衛兵に差し出し、さっさとこの場から離れようと門をくぐって街の中へと入っていく。
『ここから進入しなければ、こんなことにはならなかったかも・・・』
・・・プライドを傷付けられたようで、悔しい気持ちが一気に込み上げてくる。
歪んだ石畳の道を抜けて、木の橋を渡っていると、ボロを着たいかにも乞食風の男女が
リフテン中心の広場で一心不乱に叫んでいる。
物乞い女:誰か・・・お金を恵んで・・・1Gだけでいい!ねぇ、アンタいいでしょう?
物乞い男:この世は平等ってもんを知らないのか?金持ちは皆冷たい目つきで俺達を睨み付けてやがる・・・
どうせ汚らしい物乞いだよ!
周りを見渡せば、高級品と偽って高値で商売をする人や、煌びやかな宝飾品を大量に買い漁り
自慢気に見せびらかす貴族がいたり・・・。
なぜこの街は貧困の差が激しいのだろう?と、考えながら立ち尽くしていると・・・
物乞い男:なにジロジロ見てやがるんだ。・・・おめぇ、他所から来た旅人か?
なら金ぐらい沢山持ってるだろう?そのふところに隠してあるモンをよこしな。
物乞いはハングリーな目つきで、Sumomoのポケットから財布を抜き取ろうと手を伸ばした。
Sumomoは後退りして物乞いから財布を奪われまいと、身をかわしたその時だ。
背後から何かの気配を感じて振り向いた瞬間、スッと風の切るような音がした。
『えッ・・・!』
左頬に古傷の目立つ男が、Sumomoの財布を高々と掲げて立っていた。
ブリニョルフ:物乞いさんよ。盗みってのはこうやるんだぜ?
物乞い男:ぐぐ・・・畜生ッ!本物にゃ、かなわねぇ。
意味深な言葉を残して、物乞いはこの場を立ち去った。
『本物って・・・まさか・・・』Sumomoは男のほうを睨んで、財布を取り返そうとした。
Sumomo:私の財布を返して!ひょっとしてあの人と共犯し・・・
ああッ!・・・こいつぅ、このぉ~返せったら!!
ブリニョルフ:おーおー怖えぇなぁー。目つきが物乞いより殺気立ってるぜ?
本来の目的を忘れて、夢中で財布を取り返そうと目一杯手を伸ばそうとしたが
この男、意外と背が高くて全然届かない。・・・シセロより体格もしっかりしている。
ブリニョルフ:ここじゃ見慣れない面だな?何しにリフテンへ来た?
こいつを返して欲しかったら、俺の言うことを聞くんだ。答えろ、小娘。
突然現れたかと思えば、初対面に対して乱暴な口調のこの男は盗賊ギルドメンバーの一人
・・・名前はブリニョルフという。
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Sumomoはなんとか、財布を返してもらった。そして運良く今回の任務である
"盗賊ギルドのデルビン・マロリーにアミュレットの鑑定を依頼する"ということも、全てブリニョルフに説明した。
・・・ところが、ただではギルドに通せないらしい。彼の言い分によると闇の一党と言えども
盗賊の知識の無いものは安易に盗賊の領域には一歩も通してはならない・・・そんな掟があるという。
闇の一党にも決まり事が幾つもあるように、彼等には彼等なりの事情があるのだ。
ブリニョルフ:・・・やり方は簡単だ。
俺が騒ぎを起こしてる間に、マデシの店の下にある金庫から指輪を盗むんだ。
そしてその指輪をブラン・シェイに気付かれないよう、奴のポケットに入れてこい。
やってくれるよな?皆通ってきた試練なんだ。これをクリアしない限り、俺のギルドには一切通さない。
そう・・・この試練を乗り越えなければ、私に課せられた任務・・・アミュレットも謎のままだし
ファルクリースの聖域にも戻れないし・・・・シセロにだって会えなくなる・・・。
Sumomo:・・・えぇ・・・わかったわ。こうなったら、やるしかない・・・!
ブリニョルフ:ハハッ!いい子だ。お前の目は闘志に満ちてるぞ。
これなら難なくクリアできそうだ。・・・窃取はカジートに元々備わった素質と言えるだろうからな。
『ここでも評判があまりよくないみたい・・・どこまでカジートのイメージが悪いのかな・・・?』
Sumomoの内心は複雑だった。
・・・―――こうしてSumomoはブリニョルフと共に、盗賊作戦を実行することとなった。